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Story
ええんちゃう?
プレゼンが行われたのは、7月のある暑い夏の日の朝だったと記憶している。前日の夜、先方からふいに連絡があり、急な依頼で申し訳ないが明日、理事長の前で説明してほしい、明日なら30分ほど時間がとれるから、と。我々は色めきたった。何しろ、めったに会えないことで有名な、超多忙な理事長が直に話を聞いてくれるというのだ。僕は9時からのプレゼンに備えて7時に出勤し、この話を用意してくれた営業部長の前でリハーサルをこなした。「ええんちゃう?」というのが彼の感想だった。会社から先方まではクルマで5分の距離だったが、我々は冷房のよく効いた営業車で向かった。ジャケットを羽織るほど寒かったが、暑苦しい姿を得意先に見せたくない、というのが営業部長の方針だった。プレゼンが始まると同時に、窓の外で工事が始まった。ズガガガガ、ドドドドド、バリバリバリ! 結果的に、僕は普段よりも声を張り上げて通る声でプレゼンをしなければならなかった。理事長は終始黙って聞いていた。そしてプレゼンが終わると最後にひと言、こう呟いた。「ええんちゃう?」
あとで聞いた話だが、見積はコンペティターよりも我々の方が高かったらしいが、結果的に大きな声でのプレゼンが功を奏したらしい。その後、担当してくださった先方の課長とは、会うのが楽しみになるほど毎回のように「いろんな面白いここだけの話」を聞かせていただいた。やはり、僕は年史制作が大好きなのだと実感した。
※非公開のため、画像はありません。ご了承ください。
担当業務/
クリエイティブディレクション、プランニング ほか
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