本物の、ことば

その日の午後、大阪のホテルで創業70周年の記念日を祝して記念式典が盛大に行われていた。式典の最後に歴史をまとめた記念映像が上映され、フィルムが終わってスクリーンが暗くなっても、長い長い拍手はなかなか鳴りやまなかった。そして。会場の熱気が冷めやらぬなか、一人の女性が泣きながら我々に駆け寄ってきた。この年史の制作を担当してくださった方だった。彼女は言葉にならない言葉を発しながら「本当にありがとうございます！」と何度も深々と頭を下げた。我々制作チームももらい泣きの涙を一生懸命隠しながら何度も深くお辞儀をして、ひたすら「いえいえ、ありがとうございました！」と繰り返すのがやっとだった。思えば十ヶ月、あっという間だった――。この間、我々は紆余曲折も四苦八苦も難関辛苦も経験しつつも、お客さまと同じ想いを共有して、偉大な創業者の方が綴ってきたこの70年の尊い努力の軌跡をなんとか形にした。制作も終盤にさしかかり、社長への最後のインタビューで僕が最も感動したのはその社長による本気のことばだった。

「先月と同じことをしていたのでは、未来はありません」

そのことばは、我々を含むすべての人に贈られた激励のメッセージだった。社長のことばは、紛れもなく本物だった。強いリーダーシップで社員の心を一つにし、正しい方向へ導いてきた、創業者のDNAが息づく心の声だった。若く、熱く、そして大きな未来を見つめる力強い瞳は、これからも多くの人を幸せにし続けるだろう。年史制作には、想像を超える教えがある。

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